レジン注型によるガレージキット量産を長年行なっていますが、一般の模型店等に流通しているレジンは
硬化後に収縮し、しかも経年変化で変形します。アマチュアが製作したガレージキットだけで無く、メーカー
製のガレージキットも経年変化で変形するのは同じです。フィギュアなら変形しても余り目立ちませんが、
乗り物の場合、特に艦船モデルは丸で切り分けたメロンの様に反り返ります。
PLATZ製のガレージキットは経年変化で変形し難い素材と言われており、PLATZの担当者に入手方法を質問
しましたが、工程の管理が難しく素人に使えないと言われました。
ガレージキットの原型が如何に正確でもレジンの成分中には有機溶剤が含まれ、硬化後に溶剤が抜けるので
収縮と経年変化が避けられません。収縮や変形等が無く素人にも扱えるレジンを待ち望んでいましたが、
近年ファインモールドからキシレン成分を含まず変形し難い"ノンキシレンレジン AXSON FASTCAST F18"
が発売されました。
航空機モデルの場合は薄い翼が変形しない様、翼の中に金属線を封入して注型していますが、
ＡＤ−１斜め翼実験機 の主翼は１mm〜２mm程度と薄いので金属線を封入出来ません。
"AXSON FASTCAST"と従来のレジンを同一条件で比較する為、ＡＤ−１斜め翼実験機の主翼を
注型しました。最初に収縮を比較します。
写真では分かりませんが、収縮の度合は以下の通りです。
オリジナル原型 137.5mm
AXSON FASTCAST 137.5mm
WAVE新 ノンキシレン 137.0mm
WAVE旧 キシレン入り 136.0mm
次は変形を比較します。
撮影時に"AXSON FASTCAST"は1ヶ月経過、WAVEの現行品ノンキシレンレジンは３ヶ月経過、WAVEの旧製品キシレン入りレジン
は約１年経過しててます。写真でも分かる様、WAVEの旧製品の変形が最も目立ちます。変形の度合は以下の通りです。
オリジナル原型 ０mm
AXSON FASTCAST １mm
WAVE新 ノンキシレン 1mm
WAVE旧 キシレン入り ２〜５mm
レジンの収縮率はＡ，Ｂ液の配合比でも変わりますが、"AXSON FASTCAST"は従来のレジンと違い収縮が
認められません。薄い部品なので全く変形しない迄には至らず、WAVEのノンキシレンレジンと大差無い様に
思えますが、更に年月を経たらどうなるか未だ分かりません。
"AXSON FASTCAST"は収縮率や変形等は在来品より優れていますが１．８ｋｇセットで￥６，０９０と割高です。
同じ部品を量産したい場合、一次原型から二次原型、三次原型を作りますが、在来品は代を重ねる毎に
一次原型より小さくなります。収縮率に優れた"AXSON FASTCAST"は二次原型、三次原型の製作に絶好です。
一般販売向けの製品に使いたくても高価なのが難点ですが、変形が少ない素材なので変形防止の金属線を封入
する手間が省けるので、その分の工数を削減出来ます。"AXSON FASTCAST"を量産品に使うか検討中です。
